東洋医学での病気の原因の考え方は、健康を保つためにとても参考になると思います。
東洋医学での健康とは
・陰陽のバランスが保たれている
・身体を構成する気・血・津液の量が充分でよどみなく体中を巡っている
・五臓六腑が協調的に働いている
西洋医学のように検査結果で数値に異常がなくても、自覚症状があると言う事は、陰陽、気・血・津液、五臓六腑のどこかに問題があると考え、バランスをとるように治療や養生をします。
精神的な病気も精神的な問題だけではなく、身体全体の問題と考えます。
大事なのは健康を無視した不摂生をして病気になってからなんとかするのではなく、予防が大事だと考えます。
病気の原因
東洋医学では病気の原因を内因、外因、不内外因の3つに分けます。
内因=体の内側から起こり、健康を害するもの=行き過ぎた感情
外因=季節の変化や、環境が身体に与える影響のこと
不内外因=上記のどちらにも分類できないもので、生活習慣のこと
内因(7つの感情)
感情があるのは人間として当たり前です
ですが、過度の感情や、過去へのこだわりは病気の原因となり、それぞれの感情が特定の臓器を痛めるとしています
過度な感情 |
傷つける五臓 |
症状 |
喜 |
心(心臓) |
不眠、不安、精神に影響 |
怒 |
肝 |
頭痛、脳卒中、動悸、不眠など |
思 |
脾 |
気が停滞して、胃潰瘍、動悸、不眠、物忘れなど |
悲・憂 |
肺 | 咳や息切れなどをするだけではなく、気と津液を滞らせ、脾臓まで影響 |
恐 |
腎 | 気が貯蔵できない、膀胱炎やむくみ、白髪の増加等 |
驚 |
腎 |
気が乱れて精神が混乱、精神不安、不眠、急な老化 |
思=考えすぎ
外因(6つの気候変化による六邪)
自然界の気候変化を六気(風・寒・暑・湿・燥・火)と呼び、これの過不足で身体に悪影響を及ぼす六邪になると言われています。
六邪は鼻、口、皮膚などから体へ入り込みますが、身体が健康なら病気にはなりません。
六邪 |
季節 |
部位 |
特徴 |
症状 |
風邪
|
主に春
通年 |
顔面など上部 |
急速、移動 |
頭痛、鼻づまり、のどの痛み、瞼のむくみ、めまいなど |
寒邪 |
主に冬
寒い夏 |
皮膚や呼吸器から侵入 |
寒気や冷えなど |
寒気、吐き気、下痢、腹痛、手足の冷え、頭痛、関節の痛みなど |
暑邪 |
盛夏 |
多汗が津液を消耗 |
気が弱る
脱力感 |
高熱、顔が赤くなる、多汗、喉の渇き、息切れ、脱力感など |
湿邪 |
梅雨時や夏
湿度の高い環境 |
経絡や臓腑 |
詰まり |
下痢、頭重感、尿が出にくい、胸のつかえ、足のむくみ、倦怠感 |
燥邪 |
秋から冬 |
潤いを好む肺 |
乾燥 |
口・鼻・皮膚・神の乾燥、乾いた空咳、喘息、胸の痛み |
火邪 |
季節性なし
他の邪気が鬱して熱化 |
上半身 |
火のようにかき乱す
熱からの乾燥 |
高熱、顔や目が赤くなる、精神不安、不眠、歯茎の腫れ、便秘など |
※風邪=ふうじゃ
これらは単独の場合もあるが、大抵はいくつか重なって発症する。
不内外因(内因でも外因でもない病因)
主に生活習慣などをさし、飲食失節、労逸、五労、体質、外傷の五つに分かれる。
中でも労逸(ろういつ)は労倦=働き過ぎと安逸=安静を組み合わせた言葉で、働きすぎも休みすぎも病気の原因となるというもので、現代の病気治療の大きなヒントになると思われます。
飲食失節(いんしょくしっせつ)
小食、過食、偏食などのこと
小食=気・血・津液の元となる栄養が失調し、身体の抵抗力も不足する。
過食=臓腑に負担がかかり、気・血の流れが滞り、消化不良などを起こす。
偏食=似た性質のものを食べ続けると臓腑に負担がかかる。
同じ性質を食べることによる寒邪、熱邪の症状が起こる
寒熱が過ぎるものを食べすぎると陰陽バランスを崩し、臓腑失調、気・血の停滞を起こす
労逸(ろういつ)
労力過度=仕事、遊び、勉強などが過剰で、気血を消耗し、心も体も疲労する事。
心労過度=悩みすぎによる精神疲労のこと。脾臓と心臓が弱り、動悸、食欲不振、下痢などを起こします。
房事過度=性生活が過ぎることによる疲労。腎に蓄えられた「精」を消耗し、腰、膝、耳鳴り、めまい、遺精、無月経などになる。
安逸過度=休みすぎた怠惰な状態。気・血が停滞し、脾臓・胃を衰えさせ、やる気や食欲がわかない。
五労(ごろう)
同じ動作を長期間続けることが病気の原因となると考える。
五労により傷つける臓器がある。(五行の色体表参照)
久視(きゅうし=目の酷使)
久臥(きゅうが=寝たきり)
久坐(きゅうざ=座り続ける)
久行(きゅうこう=歩き続ける)
久立(きゅうりつ=立ち続ける)
体質
痰飲体質やお血体質がある。
痰飲体質=「痰」は体内に発生する粘り気のある物質で、「飲」はさらさらした物質のこと。
東洋医学では喉だけではなく、体中にとどまるとされ、留まる場所によって症状が違う。
肺なら咳や痰、喘息など。大腸なら下痢や足のむくみ、飲食の低下など。
お血体質=お血とは血の巡りが悪くなり、臓腑や経絡に停滞した状態のこと。
血液が停滞すると、栄養を運搬する機能が低下し、胸や心臓の痛み、月経痛などが現れる。