不登校は心の病気だけが原因ではないかもしれません 1


これから書くのは知り合いの男の子、
仮にA君としましょう。
彼が高校三年生の時に不登校になった時のエピソードです。
彼は心の悩み、
もしくは精神的な病気が原因で不登校なのでは?
と思われたのですが、
結果的には意外な身体的理由で学校へ行けなかったのだという内容です。

あくまでA君の体験記であり、
すべての人に当てはまるわけではありませんが、
すべて手を尽くして、
行き詰ってしまった方々に、
何らかのヒントになるのではないかと思い、
書こうと思い立ちました。


進学校に通うA君が学校を休み始めたのは、
高校3年生の5月でした。
「風邪をひき咳が出て苦しい」
と言うのがその理由でした。
親元を離れ、高校の近くに下宿していた彼は、
高校への連絡は親からしなければいけないというルールがあり、
そう親に言いはしたものの、
「勉強するから」と、
自宅へ戻りませんでした。

彼の両親もまさかそれが、
長い不登校の始まりだとは思いませんでした。

・・・いえ、実は少し予感はしていました。
神経質な彼は中学三年の時にも、
不登校ではないけれど、
精神的にピリピリしていた時期があったからです。

病院へは自分で行ったと言い、
薬も飲んでいるとのこと。
けれどそれは1週間を過ぎても治りません。
両親がかわるがわる様子を見に行きましたが、
本人がよくならないと言うので、
自宅へ連れ戻し、様子を見ましたが、
咳はほとんどしていません。

「息が苦しい」
「胸の中に何かが詰まっている」

それからさらに一週間。
病院の薬をもらい毎日飲んでも変化はありません。

そこでまず、色々な検査をしました。
血液検査、レントゲンなど、
考えられる検査はすべてしましたが、
どこも「異常なし」

そうなると言われることは決まっています。
「身体的なことが原因ではないかもしれません」

両親は学校の先生にも連絡を取り、
学校の様子を聞きました。
彼の通う進学校は生徒が全体的に落ち着いていて、
いじめなどの兆候は見られないとのこと。
本人もいじめは否定します。
部活動をやっていたので3年最後の大会には出場しました。
また、重要な試験があれば、
まさに「はってでも」行きました。

「行きたいのにいけないんだ」

A君は言います。

そうなると考えられるのは
精神的な病気しかありませんでした。

両親は様々な相談機関へ彼を連れて行きました。

児童相談所。
それに近い施設。
個人営業のカウンセラー。
スクールカウンセラー・・・。

はじめ言葉少なに話していた彼は
段々話さなくなっていきました。

そうこうする間、
母親は何とか彼の心を開いて悩みを聞き出そうとし、
父親は学校へ行こうとしない彼に腹を立て、
とうとういさかいが起きてしまいました。

その地方で一番大きい精神科病院を紹介され、
受診したところ、
「統合失調症の疑い」と言われました。
疑い、と言うのは
彼がほとんど自分から話そうとしないので
はっきりわからなかったからです。

そう診断した医師とは相性が悪かったようで、
別な医師を紹介されました。
その医師とは少しずつですが話はじめましたが、
「精神的に落ち着く」と処方された薬は
「眠くなって勉強ができない」
と言う理由で飲もうとしません。

両親は途方に暮れ、
本人はどんどん自分の殻に
閉じこもっていくように見えました。

彼の母方の祖母から連絡があったのは、
そんな風に「すべてに行き詰った状態」の時でした。

母親から話を聞いて心配していた祖母が、
親戚に「似たような状態の子どもを治したことがある」人がいると教えてくれました。

もう、夏休みに入ろうとする頃でした。

(次回へ続きます)